式貴士『カンタン刑 式貴士怪奇小説コレクション』
八人を惨殺した残酷非道な殺人鬼が、判決を聞き、恐怖のあまり言葉を失った。死刑よりも遥かに重い刑罰「カンタン刑」とは? (表題作) 念じた物を石に変える能力を持つ男が、邪悪な欲望を次々と遂げてゆく……。(「おれの人形」) 複数の筆名で多彩な仕事を残した異才による、悪夢のような十二篇と、幻の劇画原作作品(上村一夫画)を収録。
![]() | カンタン刑 式貴士 怪奇小説コレクション (光文社文庫) (2008/02/07) 式 貴士 商品詳細を見る |
エッセイ・平山夢明
解説・五所光太郎
お気に入り度★★★★☆ オススメ度ある意味★☆☆☆☆
間羊太郎名義の『ミステリ百科事典』でミステリファンにはおなじみの、式貴士の怪奇小説傑作集。
すごくベタな例えだけれど、2007年度版の「このミス」国内編で一位、平山夢明『独白するユニバーサル横メルカトル』が気に入ったという人には、一も二もなく読んでみることを勧める。もしくは、ああいうかっ飛んだ発想、キレまくりテンション、そこはかとなく漂うロマンティシズムがたまらなく好みだという人にも手に取っていただきたい。自分はアレはついていけなかったという人、極端なエロ・グロ・ナンセンスは自分の読書体験には必要ない、そんなものは極力排除したいという方は読まないほうがいいかと。というか――俺が勧められる立場だったら、友人がこんなもん普通に勧めてきたらそいつとは縁を切るけどね。こんな半端なくトチ狂った小説(←賛辞)を勧めてくるやつなんか、頭がおかしいに決まってるもん。
本書に収められた12編のうちから、いくつかお気に入りをピックアップ。
・「カンタン刑」・・・本書巻頭に収められたブチギレた傑作。著者の言葉をもって紹介に代える。「正常な神経の持ち主、ゴキブリの嫌いな人、食事前の人は絶対にお読みにならないでください。もしお読みになって、吐き気、目まい、悪夢に悩まされても、当方ではいっさいの責任はもちません」。・・・いささか大げさすぎるかもしれないけど。
・「血の海」・・・世の中のすべての水が血になってしまったという話。よくもこんな馬鹿げた発想を小説にしようと考えたものだ。ラストシーンが不気味な余韻を残す。
・「塵もつもれば」、「鉄輪の舞」・・・どちらも掌編といえる短さの小説だが、ヒネリが上手く決まっていて好み。
・「東城線見聞録」・・・マルコ・ポーロを模した人物の語りに乗せて、東武東上線の駅名をもじったゴロ合わせと駄洒落で一本書き通してしまえる凄さ、というかなんというか。
